０６年７月５日（火）　ジョン・ウェインの身長

数年前ロサンジェルスを訪れた時ハリウッドまで足を延ばしてチャイニーズシアターを見に行った。この映画館はハリウッド映画の封切館として有名で、建物の周りの敷石には歴代の映画スターの手形や足形が刻まれている。

別項でも述べたように若いときの私は大の映画ファンで大学生の時には週に２〜３回見に行くこともあったような気がする。邦画を見ることは少なくて見るのはほとんど洋画だった。ある年キネマ旬報で調べてみるとその前年の輸入映画のおよそ三分の二を見ていたことがある。

そういうわけでチャイニーズシアターの敷石に刻まれた映画スターの手形・足形には大いに興味を引かれ熱心に見て回った。有名なスター達のサインを見つけるたびにかつて見た映画が思い出され懐かしさでいっぱいで心が若返ってくるのであった。

見て回っているうちにJohn Wayneと署名された足形のところに来て私は思わず立ち止まった。足形が小さいのだ。西部劇の王者だったジョン・ウェインは堂々たる体躯をしている巨漢だった。私は靴を脱いで自分の足をその足形に合わせてみた。何と！私の足より小さい！

私は加齢とともに背が１センチ余り縮んで現在の身長は１７１．５　センチほどだが、若いときには１７３センチ近くあった。戦時中に小学校に入学した私の世代では背は高いほうで小・中・高を通じて属したクラスではたいてい背の順に並ぶと少なくとも５番以内、時には２〜３番ということもあった。

身長の割りには座高が高く９５センチあったので、欧米人並に足が長かったら優に１８０センチは超えていたはずだ。そのせいか足が大きく靴は２６センチのサイズを選んでいる。それにしても２６センチのサイズは大柄な欧米人には平均的な数値ではないのだろうか。その私の足よりもジョン・ウェインの足のほうが小さいとは！

ロサンジェルス周辺の観光地を回ったときの案内人を務めてくれた日系米人の女性の説明ではジョン・ウェインは実際は小柄で身長は５フィート６インチ（１６７．６センチ）しかなかったとのことであった。映画を撮影するときは背が高く見えるようにするために、ジョン・ウェインが出入りするドアの大きさを小さくしたり、部屋の天井を低くしたりするなど様々な工夫をこらしたとのことであった。

そこでインターネットの検索サイトで「ジョン・ウェイン　身長」と入力して調べてみた。ヒットしたサイトのほとんどはジョン・ウェインの身長は１９３センチと記していて、なかには１９４センチや１９５センチと書いているところもあった。「ノッポ男優ベスト５」という情報ではクリント・イーストウッド、ロック・ハドソン、ジャック・パランス、リーアム・ニーソンなどと並んで５位に入っている。

しかし、きわめて数は少ないがジョン・ウェインの身長は低かったと記しているサイトもあるにはあった。そこでは前述の案内の説明のように撮影のときいろいろ工夫して観客の目をごまかしたと書いてあった。その一つを引用してみる。

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ハリウッドにあるチャイニーズ・シアターの前には、映画スターの手形、足形が敷き詰められてある。そこにはアメリカの男性像を象徴するジョン・ウェインの足形もあるが、よく見ると随分足のサイズが小さい。また手形は小さな手をカムフラージュさせるためか、手のひらを押し当てないで、彼だけが握り拳を押し付けている。

ジョン・ウェイン主演の映画を観ていると、優に190センチを超える大男である。ユニバーサル・スタジオのガイドさんの逸話によると、彼の身長は174センチだそうだ。ヒールの高いブーツを履いて、帽子を被れば180センチ以上に見えるのだ。

残りの10センチ差は、家屋のサイズなど、セットを小さく製作することによって、ジョン・ウェインを大きく活写した。おまけにライフルや小道具のサイズを小さく演出して、馬に至るまで小振りのものを調達してくる。勿論、脇役陣も背の低い俳優を選ぶ。ユニバーサル･スタジオには、今でもジョン・ウェイン御用達のセットの数々が、大切に保管されている。
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この情報は私を案内してくれた日系女性の説明と一致している。しかし本当にそうなのだろうか。映画スターともなれば人前に生身の姿をさらすことは多いにちがいない。そこでも人々の目を欺き通すことが可能なのだろうか。

１９３センチ説のサイトでは彼は巨漢だったので手や足も大きくピストルを握らせるとピストルが小さい玩具のように見えるので大きいライフルを握らせることが多かったのだと書いている。別のサイトでは彼の両親はともに身長が１６０センチ足らずだったが母方の祖父が身長１９０センチの巨躯だったので隔世遺伝でジョンも巨漢になったと記している。

彼の足の寸法はサイズ１１だったと書いているサイトも見つかった。単位はインチのはずだから換算すると２８センチということになる。これなら身長１９３センチと矛盾しなくなる。有名人のオブジェを作っている会社のサイトには身長１９５センチのジョン・ウェインのオブジェが載っているがこのオブジェが着ているシャツと履いているブーツは本人が身につけていたものだと書いてある。

チャイニーズシアターではもう一つ不可解な署名と足形を見つけた。Donald Duckという署名とその足形である。ドナルド・ダックとは言うまでもなくディズニーの漫画のキャラクターであって実存していない。虚構の世界の存在物をあえて実世界に混在させるのは米国人一流のユーモアであろうが、駄洒落に近いような気がしないでもない。

ひょっとするとジョン・ウェインの足形も米国人の駄洒落の産物なのだろうか。私の悩みは尽きないわけである。

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